南部美人：代表銘柄「南部美人」｜海外へ向け日本酒の魅力を広める蔵

代表銘柄「南部美人（なんぶびじん）」を醸す、株式会社南部美人（なんぶびじん）は、岩手県二戸市に蔵を構える蔵元です。

このページでは、株式会社南部美人の歴史やおすすめ銘柄などを紹介します。

南部美人の歴史
1. 創業は1902年
2. 南部美人の誕生
世界へ日本酒の魅力を広める
南部美人の所在地やアクセス情報
南部美人のおすすめ銘柄は「南部美人純米大吟醸」

南部美人の歴史

株式会社南部美人は、二戸市福岡の本社蔵、二戸市下斗米の馬仙峡蔵と岩手県二戸市に2つの蔵を構える蔵元です。社長は5代目となる久慈浩介氏、杜氏は林敬宏氏が務めています。

創業は1902年

創業は1902年（明治35）。初代の久慈末太が、醤油の醸造元を営んでいた技術を活かし、日本酒造りを始めます。創業当初の銘柄は、二戸市堀野周辺から職人を雇い、仕込み水を自社内と武内神社境内の井戸水を使用したことから「堀の友」を名付けられました。

1916年（大正5年）、初代の末太が若くして亡くなってしまいます。息子が幼かったため、末太の妻ナヲが2代目となり「久慈酒造合名会社」を設立。

南部美人の誕生

1951年（昭和26年）、3代目の秀雄は「これからは良い酒を造らなければ」という信念を持ち、南部杜氏の雇用。

当時の二戸税務署長の指導のもと、銘柄を南部藩の地名「南部」と淡麗できれないな酒の味を例えた「美人」を合わせ、「南部美人」と名付けます。これが現在まで親しまれている南部美人の由来です。

2001年（平成13年）、4代目の浩が社長に主任し、現社名である「株式会社南部美人」に社名を変更。

世界へ日本酒の魅力を広める

5代目にあたる現社長の久慈浩介氏は、全国でもいち早く日本酒を海外へ積極的にアピールし、販路を広げた人物です。

きっかけは高校3年生のときのアメリカ留学でした。5代目は別の進路を検討していましたが、アメリカで日本の文化や食材がリスペクトされていることを肌で感じ、家業の日本酒造りに目が向くことに。

1997年（平成9年）、浩介氏は「日本酒輸出協会」という日本酒の海外普及と国際化を支援する任意団体の立ち上げメンバーとなり、本格的な海外進出を始めます。

進出当初、試飲会などさまざまなイベントは大盛況なものの、販売数や輸出量は伸びませんでした。飲食店一つひとつへの営業やラベルを英語表記にするなどの地道な活動により、徐々に販売数は増加していきます。

転機になったのは、日本酒を置いてくれた海外の店のソムリエの「どうして岩手の酒なのに岩手の米を使わないのか」という疑問の言葉でした。

ワインの世界では「テロワール」という原料となるブドウ畑を取り巻く自然環境要因を指す用語があるくらい地域性が重視されています。

この言葉で「海外で販売するお酒は地元産にこだわったワインのような形にしないとだめだ」と気付かされたのが転機となったのです。

そこで南部美人では、二戸市で栽培した酒米ぎんおとめを使った「南部美人特別純米酒」を開発。それをきっかけに、現在では世界39カ国に販路を持つ蔵となっています。

海外での評価は高く、インターナショナルワインチャレンジ（IWC）2017で、「南部美人特別純米酒」は見事「チャンピオンサケ」を獲得。

また、2007年からはJALのファーストクラスの機内酒、2013年からはエミレーツ航空とエティハド航空の日本発着便におけるファーストクラス・ビジネスクラスの機内酒、2020年にはANA国際線ファーストクラスの機内酒に採用。2010年には、FIFAサッカーワールドカップ南アフリカ大会の公式「日本酒」にも選出されるなど、南部美人は岩手から海外へ日本酒を発信し続けています。

2024年12月、日本酒を含む日本の「伝統的酒造り」がユネスコの無形文化遺産に登録されることが決定。これも、日本酒の魅力を海外へ広め続けた人々の活動が実を結んだのではないでしょうか。

参考
南部美人公式HP
農林水産省