日本酒好きならずとも、その名を知る人は多い銘醸蔵、出羽桜(でわざくら)酒造株式会社。1892年(明治25年)の創業以来、山形県天童市を拠点に、日本の酒造り文化をリードし続けてきました。
出羽桜を語る上で欠かせないのが、「吟醸酒のパイオニア」としての顔。かつては品評会のためだけの特別な酒だった吟醸酒を、いち早く一般家庭へと広め、さらには世界市場へと橋渡した蔵として知られています。
このページでは、吟醸酒ブームの立役者となった歴史から、世界的な評価など、出羽桜の魅力を解説します。
出羽桜酒造の歴史|吟醸酒を「市民の酒」へ
出羽桜酒造の創業は1892年(明治25年)。その歴史は、日本酒の価値観を大きく変えた歴史でもあります。
「桜花吟醸酒」が起こした革命
1980年(昭和55年)、日本酒業界に衝撃が走る。それが「桜花(おうか)吟醸酒」の発売です。当時、吟醸酒は非常に高価で希少な「鑑評会用の酒」でしたが、出羽桜はこれを「誰もが楽しめる価格で、日常の食卓に」と一般発売しました。この決断が、日本中の日本酒ファンにフルーティーな吟醸酒の魅力を伝え、空前の「吟醸酒ブーム」を巻き起こしたのです。
「地元の誇り」であること
三代目・仲野清次郎氏が掲げた「地元の人が、贈答品として自信を持って贈れる酒を造る」という精神は、今も蔵の根底に流れています。出羽桜美術館を設立し、地域の伝統文化を保護するなど、酒蔵の枠を超えて、山形の誇りを守る存在であり続けています。
海外進出のパイオニア|世界が認めた「SAKE」
今でこそ当たり前となった日本酒の海外輸出ですが、出羽桜はその道をいち早く切り拓いた先駆者です。
いち早く輸出を開始し、文化を広める
1997年(平成9年)、まだ海外での日本酒認知度が低かった時代に、出羽桜は米国への輸出を開始。ただ酒を売るのではなく、日本酒の繊細な風味を守るための「コールドチェーン(低温輸送)」を確立。現地での扱い方まで含めて伝えることで、本物の品質を世界に浸透させました。
世界最高峰の称号「チャンピオン・サケ」
その努力は結実し、ロンドンで開催される世界最大級のワイン品評会IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)にて、最高賞である「チャンピオン・サケ」を2度も受賞(2008年・2016年)するという、史上初の快挙を成し遂げます。出羽桜酒造は、まさに、世界が認めるトップブランドとなったのです。
「本社蔵」「天空蔵」「山形蔵」の役割
出羽桜の高品質を安定させているのは、役割を明確に分担させた複数の拠点の存在です。
出羽桜酒造では、営業事務所などの本社機能を備える本社蔵のほか、2つの拠点が稼働しています。
天空蔵(天童市):精米と静寂の貯蔵庫「酒眠蔵」
本社のある天童市に位置する「天空蔵」は、酒造りのスタートとゴールを担う重要な拠点です。
【高精度な自社精米】
吟醸造りに欠かせない精米工程を自社で行い、米の種類や状態に合わせた緻密なコントロールを可能にしています。
【酒眠蔵(しゅみんくら)】
醸造された酒をマイナス温度でじっくりと熟成させる大型冷蔵庫を備えています。出荷の瞬間までお酒を「眠らせる」ことで、搾りたてのフレッシュな香りを閉じ込め、安定した状態で全国・世界へ送り出しています。
山形蔵(山形市):伝統が息づく「醸造蔵」
山形市にある「山形蔵」は、酒造りの最前線です。
【熟練の技が光る醸造】
出羽桜伝統の味わいを生み出すための醸造拠点。伝統的な手造りの精神を重んじつつ、麹造りや仕込みといった繊細な工程を職人たちが担っています。
【品質への挑戦】
天空蔵で磨かれた米を使い、2つの蔵が連携することで、妥協のない最高の一滴を醸し出しています。
出羽桜のこだわり|「手造り」と「低温貯蔵」
世界を驚かせる品質の裏には、極めて愚直なまでの「手間」と「管理」があります。
【手間を惜しまない伝統製法】
大規模な設備を持ちながらも、麹造りなどの重要な工程では機械に頼りすぎず、蔵人の五感による「手造り」を大切にしています。
【マイナス温度へのこだわり】
吟醸酒特有のフルーティーな香りは非常にデリケートです。出羽桜では、蔵全体を巨大な冷蔵庫のように管理し、氷点下の環境で貯蔵・熟成を行うことで、時間の経過による劣化を防ぎ、常に最高の状態で消費者に届けています。
【山形産の酒米の活用】
山形県が開発した「出羽燦々(でわさんさん)」や「雪女神(ゆきめがみ)」といった地元米のポテンシャルを最大限に引き出す醸造技術は、県内外から高く評価されています。
出羽桜酒造の酒蔵情報
| 所在地 | 山形県天童市一日町一丁目4-6(Googleマップで確認) |
|---|---|
| 社長 | 仲野益美氏 |
| 杜氏 | 本社蔵:佐藤眞一氏、山形蔵:井上義之氏 |
| 代表銘柄 | 出羽桜 |
| 酒蔵見学 | 可 |
| 直売所 | 無 |
| アクセス | ・JR天童駅、JR天童南駅より徒歩15分 ・JR山寺駅より車で15分 ・山形空港より車で15分 ・山形交通バス北目口下車すぐ |
| 公式HP | https://www.dewazakura.co.jp/ |
| 公式オンラインショップ | 有:https://dewazakura-store.com/ |
酒蔵見学には、「通常ツアー」と「プライベートツアー」とがあります。詳しくは公式HP「酒蔵見学」で確認ください。
直売所はありませんが、出羽桜専門店「仲野酒店」が本社に隣接しています。また、公式HPで全国の取扱店舗の検索も可能です。
出羽桜酒造のおすすめ銘柄
| 出羽桜 桜花吟醸酒 | 出羽桜 純米大吟醸 一路 | 出羽桜 純米吟醸 出羽燦々誕生記念 |
|---|---|---|
| 全ての原点。蓋を開けた瞬間に広がる華やかな香りと、爽快な後味。冷やして飲む吟醸酒の魅力を世に知らしめた金字塔的な一本。 | IWC王者の一本。重厚な旨味と気品ある香りが調和したプレミアムな味わい。海外でも絶大な人気を誇ります。 | 山形の恵みの結晶。山形県産の原料にこだわり、柔らかな米の旨味と酸のバランスが特徴。山形を最も感じられる1本。 |
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山形から世界へ、進化し続けるパイオニア
出羽桜酒造は、吟醸酒の歴史を塗り替え、世界へ道を切り拓いた先駆者です。しかしその根底にあるのは、山形の風土を愛し、地元の人が誇れる酒を造り続けるという、ひたむきな職人精神です。
天空蔵の徹底した貯蔵管理と、本社蔵と山形蔵での醸造。複数の拠点が織りなす究極の品質管理が生む一滴を、ぜひその舌で確かめてみてください。



