代表銘柄「金滴(きんてき)」を醸す金滴酒造(きんてきしゅぞう)株式会社は、どのような蔵元なのでしょうか。
このページでは、金滴酒造株式会社の歴史やこだわり・特徴、おすすめの銘柄、蔵の見学情報などを紹介します。
金滴酒造の歴史|移住し町を開拓した人々の思いが生んだ地酒
金滴酒造株式会社は、北海道空知地方に位置する新十津川町(しんとつかわちょう)にある蔵元です。創業は1906年(明治39年)、西村直一・宇治川伊三郎ら9人が発起人となり、総勢81人の賛同者を集って「新十津川酒造株式会社」という社名で純法人組織として設立されました。現代表取締役社長は名取重和氏が務めています。
新十津川町で創業した金滴酒造は、新十津川町の歴史と深くかかわる蔵元です。ここでは、新十津川町の歴史にも触れながら金滴酒造の歴史を紹介していきます。
新十津川の誕生
新十津川町の町名の由来は、奈良県吉野郡十津川村にあります。
- 1889年(明治22年):奈良県吉野郡十津川村で大水害が発生。被災した人々は移住を決意
- 1890年(明治23年):北海道の未開の地「トック原野」に入植し、新十津川村を設置
- 1902年(明治35年):新十津川村は北海道二級町村に列せられる
- 1957年(昭和32年):町制施行、現市町村名の「新十津川町」となる
北海道新十津川町は、奈良県吉野郡十津川村で発生した大水害で被災した人々が移住し開拓された町です。
水害により壊滅的な被害を受け生活基盤を失った奈良県吉野郡十津川村の人々は、「必ずや第2の郷土を建設する」という思いを抱き、600戸・2489人の村民が北海道への移住を決断しました。
1890年(明治23年)、北海道の未開の地「トック原野」に入植。奈良県十津川村の文化を伝えるという願いを込め、この地は「新十津川村」と命名されました。
新十津川の開拓は、簡単なものではありませんでした。原生林の開墾、冬の厳寒との戦い、食料への不安など、さまざまな困難が待ち受けていたのです。
そういった状況に、入植者の人々は酒どころではないと考えます。「会席酒宴ヲ為(な)スベカラズ」といった誓約書を記し、記念日や祝日など以外での10年間の断酒を誓って開拓に集中しました。
金滴酒造は「自分たちの呑む酒を造る」から生まれた
金滴酒造は、入植者の人々が「自分たちが呑む酒は自分たちで造る」という発案から生まれました。
入植から16年、強い意志で続けられた新十津川の開拓は進み、田畑の収穫もある程度安定します。断酒は解禁され、「おどれな くらう おどれら つくろうらい(俺たちの呑む酒は俺たちで造ろうではないか)」という発案により、新十津川の酒造りは始まったのです。
1906年(明治39年)9月、西村直 一・宇治川伊三郎ら9名が発起人となり、総勢81名の賛同者を集い、後の金滴酒造となる「新十津川酒造株式会社」が誕生しました。設立当時の銘柄は、「徳富川(とっぷがわ)」「花の雫(はなのしずく)」です。
代表銘柄「金滴」と金滴酒造の誕生
現在の代表銘柄である「金滴」の名が生まれたのは、1918年(大正7年)。会社の設立から、12年目のことです。
大正7年(1918年)当時の専務宇治川伊三郎は、ピンネシリ山麓を散策の途中、近くを流れる砂金川の水を飲もうとして、手からこぼれ落ちる水を見なが ら、『金の流れの滴』いうことから『金滴』の名を思いつき、これを商標として使うことを決め、酒銘徳富川を廃し、新たに金滴(きんてき)・銀滴(ぎんてき)・花の雫と称して発売、資本金も3万円とした。
出典:金滴酒造公式HP
このように「金滴」は、金の流れの滴から思いついた名です。このとき生まれた金滴の名が、後の会社名にもなります。
会社名が現在の金滴酒造株式会社になったのは、1951年(昭和26年)11月。会社の設立45年目のことです。
参考
国土交通省北海道開発局 札幌開発建設部
新十津川町 開拓史(前編)
北海道の大自然に育てられた酒蔵
金滴酒造の特徴|北海道の地酒にこだわる蔵元
金滴酒造の特徴は、「北海道の地酒」へのこだわりです。
地元新十津川町の「吟風」と「きたしずく」を中心に、原料米の約95%以上で北海道産酒造好適米を使用。仕込水には、ピンネシリ山系を源とする徳富川の伏流水が使われています。
このように金滴酒造は、新十津川町を中心とした北海道の大自然が育んだ原料による「北海道の地酒」を造ることにこだわる蔵元です。
金滴酒造の見学情報
金滴酒造の酒蔵は見学可能です。
- 公式HP:金滴酒造株式会社
- 住所:北海道樺戸郡新十津川町字中央71-7
- 電話:0125-76-2341
- 事前予約:要
- 営業時間:予約時に要確認
- 休業日:土日・祝日は不定休
- 料金:無料
蔵の見学には事前予約が必要です。土日祝は休みなので注意しましょう。
蔵には直売所もあり、土日祝も営業(正月三が日は休み)しています。直売所の営業時間は以下の通り。
- 平日:8:30~17:30
- 土日祝:10:00~16:00
また、蔵の近所にある「レストランくじら」と、グリーンパークしんとつかわのレストラン「すばる」では、金滴の酒粕を使用したラーメンを楽しめます。金滴酒造を訪れた際は、ぜひ足を運んでみてください。
【アクセスマップ】
【外観】
【関連動画】
新十津川町と隣接する滝川市の観光課による金滴酒造を紹介した動画があったので載せておきます。
金滴酒造のある新十津川町へ実際に行ってみた
2024年8月、金滴酒造がある新十津川町に行ってきました!上は、金滴酒造の正面からの写真です。
金滴酒造の杉玉。光が差し込んでいい感じに撮れました。
歴史を感じられる金滴酒造の看板です。
中に入ると立派な樽が置いてあります。
金滴酒造の直売所は雰囲気が良い!
直売所には、金滴酒造の各銘柄や限定酒、オリジナルグッズなどが売られています。
私が訪れたときに接客をしてくれたのは、なんと名取社長。なんか見たことのある人だなぁと思っていたところ、店内の写真が目に入り「ネットで見た人だ」と気づいたのです。
社長とわかりなぜか緊張してしまいましたが、気さくで話しやすく面白い人でした。購入した日本酒の話はもちろん、お酒以外の話でも盛り上がり、予定以上に滞在してしまいました。
金滴酒造の店内、店の人が社長と気づいた写真です。さだまさしさんや北海道知事との写真が置かれています。さだまさしさんは、「金滴」のラベルを揮毫しています。
数量・蔵限定酒も購入可能です。また、金滴酒造の歴史や貯蔵試験などの関連資料も置かれています。
楽しく買い物できる、雰囲気の良い店です。機会があれば、また足を運んでみたいと思います。
【金滴酒造 直売所】
- 住所:北海道樺戸郡新十津川町字中央71-7
- 電話:0125-76-2341
- 営業時間:平日8:30~17:30・土日祝10:00~16:00
- 休業日:土日祝不定休・正月三が日
- 公式オンラインショップ:有り・公式HP内
金滴の酒粕を使った「金滴酒粕ラーメン」を食べる
新十津川町では、金滴の酒粕を使ったラーメンを食べられるとのことで、実際に食べてきました。
訪れたのは「レストランくじら」。レストランくじらは、新十津川物産館の2Fにある、新十津川町の食材を使ったメニューを提供する食事処です。
金滴酒造から車で3分くらいの場所にあります。
新十津川物産館の方向に進むと、大きな看板とくじらが目に入るので、すぐにわかる建物です。
道路沿いに目立つ看板があるので、すぐにわかります。
大きなくじらも目印です。1階には新十津川のお土産が買える売店があります。
レストランくじらの利用の際は、まず1Fにある食券販売機で食券を購入し、2Fのレストランに向かう、という流れです。
金滴酒粕ラーメン(塩)。味は塩のみでの提供で、価格は800円です。
想像以上に酒粕感があり、飲みごたえのあるスープでした。ラーメンとしてもおいしかったですが、麺を食べきったあとは、おいしいスープ料理のような感覚でいただけます。それくらい、酒粕がしっかりと主張されているラーメンでした。
味がしっかりしつつあっさり塩味なので、スープもすっかり飲みきれます。
帰り際、1階に金滴酒粕ラーメンの袋麺が売っているのに気づき、つい買ってしまいました。
【レストランくじら】
- 住所:北海道樺戸郡新十津川町中央5-1
- 電話:0125-76-3141
- 営業時間:11:00~14:30
- 定休日:月・火(祝日と重なる場合は営業)
- 公式HP:https://bussankan.shintotsukawa.net/restaurant/
1階の売店は10:00〜17:30まで(11〜2月は16:00で終了)の営業です。
参考までに、新十津川物産展では公式オンラインショップも開設しています。新十津川の名産品はもちろん、袋麺をはじめとした金滴の関連食品も購入可能です。
公式オンラインショップ:https://shop.shintotsukawa.net/
新十津川町にある有名な手作りソーセージ
せっかく新十津川町に来たのだから、ということで、食べ物ばかりですが酒のあてを買うことに。
新十津川物産館を出ると、すぐに気になる店を発見。さまざまメディアに取り上げられている、「ヴルストよしだ」という手作りハム・ソーセージの店です。
新十津川物産館からは目と鼻の先、歩いて行ける距離にあります。
店の外観はこんな感じです。大きな道路沿いなので、すぐにわかると思います。
この店には、年中無休で24時間利用可能な自動販売機も設置されています。撮影し忘れたのですが、上画像の右側の小屋の中にありました。
こちらの店では、「ガーリックソーセージ」と「チーズヴルスト」を購入。茹でと焼き、それぞれでおいしくいただきました。ビールやサワー系はもちろん、日本酒にも最高です。
【ヴルストよしだ】
- 住所:北海道樺戸郡新十津川町中央6-99
- 電話:0125-72-2525
- 営業時間:10:00~18:00
- 定休日:火・水
- 公式HP:https://wurst-yoshida.com/
- 公式オンラインショップ:https://rakuuru-wurstyoshida.com/
公式HPには、ソーセージの種類それぞれのおいしく食べるためのコツも紹介されています。
美唄焼き鳥
美唄焼き鳥を買うため、美唄市へ移動。美唄焼き鳥とは、鶏の皮や内卵、内臓などのモツの部位とたまねぎが一つの串に刺さった焼き鳥です。
美唄市に着いたのですが、予約していなかったため購入できず…。諦めて車を走らせていると、大きな道の駅があったので寄ってきました。
着いたのは「道の駅 三笠」。新十津川町から、車で40分くらいの場所です。
道の駅の売店に入ってみたところ、なんと美唄焼き鳥が売っていました。焼き鳥が売っている店は混雑していましたが、10分くらい並んで購入。
知らなかったのですが、美唄では焼き鳥だけでなく「とりめし」も有名なそうです。売っていたので、焼き鳥と一緒に買ってみました。
左が精肉で右がモツ。人それぞれですが、食べた感じ、個人的にはモツのほうがおすすめ。日本酒にも、もちろん合わせやすい焼き鳥です。
少しでも冷めるとかたくなるので、ガンガン温めてから食べることをおすすめします。
【道の駅 三笠 売店】
- 住所:三笠市岡山1056-1
- 電話: 01267-2-5775
- 営業時間:9:00~18:00(4月~9月)・9:00~17:00(10月~3月)
- 定休日:月(月が祝日の場合は翌日)・12月30日~1月4日
金滴酒造の酒を飲んでみた
今回、金滴酒造の直売所で購入したのは、「純米大吟醸 金滴」です。お猪口も一緒に購入。
純米大吟醸 金滴は、数量・蔵限定の日本酒、そして仕込むのは今年が最後、という文字と言葉につられて即決しました。
純米大吟醸 金滴は、道産酒造好適米「吟風」と「彗星」をブレンドし、45%まで丁寧に磨いて醸造した日本酒です。
ラベルはこんな感じです。良い顔してます!
こちらは裏ラベル。新十津川産原料100%の日本酒です。
「冷やして飲むのがおすすめ」ということだったので、しっかり冷やしました。お猪口も当然冷やしています。瓶が汗をかくぐらい冷えている状態です。
冷えたお猪口に、冷えた金滴を注ぎます。
辛口のすっきりした口当たりで、鼻から抜ける香りが心地よく感じました。冷やしていたことも関係しているかもしれませんが、雑味を感じずスッと飲み干せる日本酒です。料理とは合わせずに、まずはお猪口2杯、金滴だけを楽しみました。
しっかり金滴を堪能したあと、いろいろな料理を合わせてみましたが、特に刺身との相性が良かったです。魚と酒の香りが合わさり、鼻を抜けていく感じが最高でした。
もちろん温度帯や合わせる料理の好みは人それぞれですが、参考にしていただければ幸いです。
金滴酒造のおすすめ銘柄
金滴 大吟醸酒33
金滴酒造の地元である新十津川町産の酒造好適米「吟風」を使用した「金滴 大吟醸酒33」。精米歩合にこだわり、33%までとことん磨き上げられた米で醸された酒は、洗礼された味わいを堪能できます。ラベルの文字は新十津川の応援大使であるシンガーソングライターのさだまさしさんが揮毫。
特定名称 | 大吟醸酒 |
---|---|
原料米 | 新十津川産酒造好適米「吟風」100% |
精米歩合 | 33% |
日本酒度 | ±0 |
酸度 | 1.3 |
アルコール度数 | 16度 |
おすすめ温度帯 | ロック・冷酒・冷や(常温) |
相性の良い料理例 | 焼き鳥(塩)・ラーメンサラダ(ごまタレ)・サラダチキン・白身魚の刺身など |
金滴 大吟醸酒33は、芳醇な旨味と凛としたさわやかさのあるお酒。精米歩合にこだわり、雑味の少ない洗礼された味を、ぜひ試してみてください。
特別純米酒 新十津川
金滴酒造の地元「新十津川町」の名が付く「特別純米酒 新十津川」は、その名の通り新十津川産の吟風100%で醸された特別純米酒です。
特定名称 | 特別純米酒 |
---|---|
原料米 | 新十津川産酒造好適米「吟風」100% |
精米歩合 | 55% |
日本酒度 | +3 |
酸度 | 1.4 |
アルコール度数 | 15度 |
おすすめ温度帯 | ロック・冷酒・冷や(常温) |
相性の良い料理例 | ローストビーフ・サンマの塩焼き・もつ鍋など |
米本来の旨みを感じられる、やや辛口の特別純米酒です。新十津川町の歴史と深いかかわりのある蔵元が醸す地元産にこだわった酒を、ぜひお試しください。
本醸造 金冠金滴
「本醸造 金冠金滴」は、北海道の開拓に深くかかわった蔵元「新十津川酒造株式会社(現在の金滴酒造)」の伝統を受け継ぐ逸品です。
特定名称 | 本醸造酒 |
---|---|
原料米 | 北海道産酒造好適米 |
精米歩合 | 70% |
日本酒度 | +2.5 |
酸度 | 1.4 |
アルコール度数 | 15度 |
おすすめ温度帯 | ロック・冷酒・冷や(常温)・ぬる燗 |
相性の良い料理例 | ホッケの塩焼き・揚げいも・エスカルゴバターなど |
すっきりとしたキレのある飲み口はさまざまな料理と合わせることができるので、食中酒としてもおすすめの一本です。
まとめ
金滴酒造株式会社は、北海道新十津川町を開拓した人々が発起人となり生まれた蔵元です。新十津川町の歴史とともに歩んできた蔵元の伝統の味を、ぜひ楽しんでみてください。
また、金滴酒造の直売所は雰囲気の良い店です。ぜひ、一度は足を運んでみてください!
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