秋田県大仙市、国内屈指の米どころとして知られるこの地に、世界的な評価を受ける革新的な酒蔵があります。
それが、金紋秋田酒造株式会社（社長：佐々木孝氏、杜氏：菅原康晴氏）です。
同蔵を語る上で欠かせないのが、「長期熟成酒（古酒）」の分野におけるパイオニアとしての顔。
代表銘柄である熟成古酒「山吹（やまぶき）」は、2009年に世界最高峰のワインコンテスト「インターナショナル・ワイン・チャレンジ（IWC）」で、並み居る大吟醸を抑えて最高賞「チャンピオン・サケ」に輝くという快挙を達成し、日本酒の新たな可能性を世界に示しました。
このページでは、「日本酒はフレッシュさが命」という常識を覆し、熟成の妙を追求し続ける金紋秋田酒造の歴史から、銘柄「山吹」に込められた想い、そしてその飽くなきこだわりを紹介します。
金紋秋田酒造の歴史
金紋秋田酒造は1973年（昭和48年）、秋田県大仙市藤木に創業。雄物川の豊かな伏流水に恵まれ、良質な酒米の産地として知られるこの地で、当初は地元に愛される地酒を醸してきました。
熟成古酒への転機と三代目蔵元佐々木孝氏の挑戦
蔵が大きく転換したのは、1989年に三代目蔵元として佐々木孝氏が蔵を継いだ頃です。
当時、蔵には先代が残した数々の「古酒」が眠っていました。佐々木氏はこれらの古酒に、フレッシュな新酒にはない、シェリーやウイスキーのような複雑で奥深い魅力を見出し、「熟成酒こそが、日本酒の新たな世界を切り開く」と確信します。
当時は「古酒＝劣化」というイメージが強かった日本酒業界において、「長期熟成酒」を主力に据えるという決断は、極めて挑戦的でした。三代目は、熟成に耐えうる酒質の研究と、年数を経た古酒を絶妙にブレンドする技術を確立し、独自の熟成酒を世に送り出します。
世界が認めた「チャンピオン・サケ」
この挑戦が実を結んだのが2009年、IWCでの「山吹1995」のチャンピオン・サケ受賞です。無名の地方蔵の熟成酒が世界最高峰の賞を獲得したことは、日本酒業界に大きな衝撃を与え、「ヴィンテージ・サケ」という新たな価値観を確立するきっかけとなりました。
代表銘柄「山吹」の名の由来
金紋秋田酒造の代表銘柄「山吹」の名の由来。そして、その味を支えるブレンド技術を紹介しましょう。
熟成が育む「山吹色」
代表銘柄「山吹」の名の由来は、長期熟成を経た日本酒が帯びる黄金色（山吹色）にあります。
熟成を重ねることで、酒質は透明から美しい琥珀色へと変化し、同時に香りと味わいが深く複雑に進化。「山吹」は、その色合いが示すように、長年の歳月によってのみ生み出される「時を味わう酒」の象徴なのです。
「山吹」の味を支えるブレンド技術
「山吹」シリーズの真髄は、単一のヴィンテージにとどまらず、複数年の熟成古酒を絶妙なバランスでブレンドする技術にあります。
例えば、代表的な「山吹ゴールド」は、10年以上の熟成酒をベースに数種類の古酒をブレンドすることで、単一の古酒では得られない、リッチでエレガントな調和を生み出しています。
その味わいは、シェリーやシングルモルトウイスキーのような香ばしい熟成香と、濃醇な旨味、そして香辛料を思わせるスパイシーさが特徴。食後酒としてはもちろん、中華料理や燻製などの強い風味を持つ料理とも相性が抜群です。
金紋秋田酒造のこだわりや特徴
金紋秋田酒造の酒造りは、「熟成」と「挑戦」という二つの柱で支えられています。
長期熟成酒への飽くなきこだわり
蔵では、熟成に適した酒質を仕込むため、一般的な日本酒よりもアルコール度数や酸度を高めに調整しています。そして、温度変化の少ない蔵内で、一本一本が最高の熟成を迎えるまで大切に貯蔵・管理されています。
この徹底した管理体制と、数十年におよぶストックがあるからこそ、奥行きのある「山吹」が生まれるのです。
既存の枠を超えたチャレンジ精神
「山吹」で世界を驚かせた後も、金紋秋田酒造の挑戦は止まりません。
それが、通常の3倍の麹米を使用し、米本来の濃厚な旨味を追求した純米原酒「X3（エックススリー）」シリーズです。
「Blanc（白麹）」「Black（黒麹）」「Rose（古代米）」など、麹の種類や古代米を使い分け、従来の日本酒にはないワインのような酸味と果実感を生み出しています。
また、オーク樽、桜樽、栗樽といった木樽に熟成古酒を詰めてさらに寝かせることで、ウイスキーやブランデーのようなスモーキーさや華やかな香りをまとわせた、「YAMABUKI 樽熟成シリーズ」など、革新的な商品を開発しています。
金紋秋田酒造の酒蔵情報
| 所在地 | 秋田県大仙市藤木字西八圭34-2（Googleマップで確認） |
|---|---|
| 蔵元（社長） | 佐々木孝氏 |
| 杜氏 | 菅原康晴氏 |
| 代表銘柄 | 山吹 |
| アクセス | JR奥羽本線 大曲駅より車で約15分 |
| 酒蔵見学 | 不可 |
| 直売所 | 無 |
| 公式HP | https://kinmon-akita.com/ |
| 公式オンラインショップ | 有：公式HP内 |
金紋秋田酒造のおすすめ銘柄
「山吹」シリーズを筆頭に、挑戦的な酒が揃う金紋秋田酒造。特におすすめの銘柄をご紹介します。
熟成古酒「山吹」シリーズ
| 山吹ゴールド 熟成古酒 | 山吹プラチナ | YAMABUKI 樽熟成 |
|---|---|---|
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| 10年熟成酒をベースに複数年ブレンド。IWC金賞を複数回受賞。シェリーのような香りとドライな後味が魅力のフラッグシップ | 20年物など、より長期・複雑な熟成古酒をブレンドした、繊細で奥深い味わいの最上位ライン | オーク樽、桜樽、栗樽などで熟成させたシリーズ。熟成古酒のスモーキーな旨味に、木樽由来の華やかさや香ばしさが加わった革新的な銘柄 |
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※熟成古酒「山吹」シリーズは、公式オンラインショップでの取り扱いはありません
革新的な「X3」シリーズ
| X3 Blanc | X3 Black | X3 Rose |
|---|---|---|
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| 麹三倍仕込み。白麹由来の柑橘系のような爽やかな酸味が特徴で、カルパッチョなど洋食と好相性 | 麹三倍仕込み。黒麹による力強い酸と、米の旨味が調和した、より骨格のしっかりした味わい。焼き鳥などにも負けない濃醇さ | 麹三倍仕込み。古代米（赤米）で美しいロゼ色に発色。苺のような甘酸っぱさと芳醇な米の甘さが魅力 |
| 公式HPで詳細を見る | 公式HPで詳細を見る | 公式HPで詳細を見る |
※画像出典：金紋秋田酒造公式HP
時を経て輝く、秋田の「ヴィンテージ・サケ」
金紋秋田酒造は、熟成古酒「山吹」を通じて、「日本酒は早く飲むもの」という概念を打ち破り、「ヴィンテージ・サケ」としての日本酒の新しい価値を創造し続けています。
それは、ワインやウイスキーのように、時をかけてじっくりと味わい、その変化を楽しむことができる、世界に誇れるお酒です。
日本酒の奥深さと、熟成の妙を体験したい方は、ぜひ一度、この黄金色に輝く秋田の銘酒「山吹」を手に取ってみてください。